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こんなバイクがあったんだ!「ヒルデブラント&ヴォルフミューラー(ドイツ)」

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長いバイクの歴史の中には今では考えられないようなバイクや、ロマンあふれるバイク、名車だったのに時代やタイミングのせいで短命だったバイクなどがあります。

そんなバイクをご紹介していく新企画「こんなバイクがあったんだ!」シリーズ第4弾です!

世界初の市販(量産)バイクは大ヒット?!



前回ご紹介した「リートワーゲン」の完成から9年後の1894年に誕生したのが世界初の量産バイクと呼ばれている「Hildebrand&Wolfmuller(ヒルデブラント&ヴォルフミューラー)」と呼ばれているバイクです。

世界で初めてドイツ語でオートバイを意味する「モトラッド(motorrad)」という言葉が使われた車両でもあります。

世界初の量産バイクで、最低でも800台以上生産された(確認できる範囲で)と言われています。
一部では3000台生産されたという情報も・・・。

パラレルツインエンジン搭載!

言葉にすると現在のスポーツバイクのようなエンジンですよね。
エンジンはフレームの足元にあり、シリンダーが水平に2本並列で配置されています。



図からもわかるようにチェーン駆動ではなく、コネクティングロッドと呼ばれる棒で直接リアホイールを駆動しています。



一般的に現在のエンジンで言うクランクという部分はエンジン内部ではなくホイールに付いていて、構造で言うと蒸気機関車の車輪を回す構造と同じですね。



上の図が蒸気機関車の構造を示した動きです。
本来は蒸気でピストンを動かすところを内燃機として動かすことで内燃機とこの駆動方式をうまく融合しています。

このエンジンを両側に搭載し、後輪を両側からロッドで駆動しているのが今回の車両になります。

また、エンジンの点火には白金(プラチナ)を用いたヒーターが使われていました。
これはリートワーゲンを作ったダイムラーが開発した方法と言われており、現在でも白金カイロとして燃料さえあれば勝手に発熱し続けるものとして活用されています。

ちなみに図の中で地面にプラーンと垂れているようなベルトはゴムベルトで、始動の補助に使われていたようです。



水冷1500cc?!



分厚すぎるリアフェンダーは先ほどの図解でわかるように、エンジン冷却用の水を入れておくタンクです。

そうなんです。
エンジンも出来たばっかりなのに実はこのバイク水冷なのです。

エンジンの周りに水が通る通路が張り巡らされており、暖かくなった水は自然にタンク内の冷たい水と対流することで冷やしていると推測されます。

また、排気量は1500ccで、排気量だけ見ると現在のハーレーと同じくらいの排気量がありますが、出力は2.5馬力でした。

しかし、リートワーゲンが0.5馬力程度だったことを考えるとかなりパワーが向上しましたね。

最高速度は40km/h前後だったと言われています。

それにしても、「水冷パラツイン、1500cc」と言うスペックを文字だけで見ると、現在のスーパースポーツバイクと並べても誰も違和感を感じなさそうですね・・・。

現存する車両はすべて博物館に・・・

まぁ、当たり前ですよね。
イギリスで保管されていたバイクがオークションに出品された際は1300万円ほどの値が付いたこともあるそうです。

実はこのバイク日本でも走ったことがあるんです。

1986年に十文字商会という会社がドイツから「ヒルデブラント&ヴォルフミューラー」を輸入し、皇居の前を公式に試運転したという記事が1986年1月21日の東京日日新聞の挿絵で残っています。

残念ながら戦争によって閉鎖

第一次世界大戦によって製造ができなくなったため、工場は閉鎖されてしまったとのことです。

大ヒットを記録して遠い日本まで輸入された車両なのにとても残念ですね。

博物館にはちゃんと走れる個体もある?

2008年に公開された動画ではありますが、実際に走っている動画もありました。



意外と速度が速くて驚きですね。

まとめ

前回のリートワーゲンから約10年、構造や、コンセプトがより洗練され、バイクとして完成されていたことがわかります。

水冷だったり、始動のためのゴムベルトが用意されていたりと市販車としてユーザー目線にたった改善も行われていて、大ヒットした理由がわかる気がしますね。


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